生き生き現場改善
2000年10月 / 217号 / 発行:2000年10月1日
目次
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巻頭言
変革の時代における経営革新と現場改善
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特集テーマのねらい(特集記事)
生き生き現場改善
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論壇(特集記事)
改善活動は香り高き遊びである
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ケース・スタディ(特集記事)
生産革新活動を通して
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ケース・スタディ(特集記事)
生産現場に元気を与える改善活動支援
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ケース・スタディ(特集記事)
省エネ・省資源に配慮した小型はんだ付け装置の開発
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ケース・スタディ(特集記事)
女性が作った女性にやさしいライン
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研究ノート
部門間の「距離」に着目した改善活動阻害要因の分析
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講座
生産情報システムの環境・設計・改善[Ⅵ]
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会社探訪
生産量の変動に柔軟に対応したセル生産ラインの構築-(株)リコー 御殿場事業所-
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現場改善
改善活動を継続させる“しかけ”づくり
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コラム(12)
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ドイツ便り(2)
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ジャスト・イン・タイム
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新製品紹介
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新刊紹介
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編集後記
現場改善の置かれている環境
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従来型の現場改善活動の成熟化
各企業の製造現場ではいろいろな創意工夫と人材の投入によって多くのムダ取り、工程改善がなされ成果を上げてきている。その蓄積は非常に大きなものがあると思うし誇れるものであろう。しかし、その蓄積が大きいがゆえに、最近では現場改善を行うための投入費用に比べて効果が出にくくなってきていることも全体的状況としていえるのではないだろうか。各企業とも市場の求める多品種少量の生産形態が確立してきたことも背景にはあると思う。かなりムダ取りや改善が進んだことによって、当然ながら改善の範囲を源流に遡り、上流工程、具体的には製品設計部門や営業部門へ拡大し、「企業体質強化」へとつなげている事例が多くなってきている。それらは、しくみの改善や情報化など、現場改善とやや異なるアプローチによって取り組みがされているようである。つまり、従来のような現場改善の方法や範囲では、成果が限定的となる傾向にあるといえる。 -
取り組み対象の変化
一方、企業の経営環境もこのところさらに変化が激しくなってきており、企業としての改善・改革の対象も変わってきている。最近、特に米国企業が情報技術の積極的活用により、今まででは考えられないような低コストや短納期を実現するビジネスモデルを引き下げてグローバルビジネス展開を行ってきている。それがトリガーとなって日本企業でも情報化やグローバル化の急速な展開が進んでいる。企業が指向する評価そのものもキャッシュフローや株主価値などにシフトしてきており、また、それら評価指標を改善するために、サプライチェーン構築の取り組みやECなど、情報技術を活用した新たなビジネスモデルの構築に企業の取り組みの焦点が当たってきている。今まで、製造現場を中心とした現場改善などによって成果を上げてきた日本企業の製品品質、低価格、安定した納期が非常に強い競争力を持っていたことは事実である。しかし、グローバル競争のなかでそれらの相対的な差異が少なくなり、また、新しいビジネスモデルという新たな手段によって実現される改革的なコスト/納期に打ち勝っていかなければならない状況になってきた。企業として競争力を維持・強化するためには情報技術、ビジネスモデルなどの観点の取り組みが避けられなくなってきているといえる。
現場改善の有効性は?
今回のテーマの視点
では、現場改善の活動自身について、どのように各企業が質的改良をしてきているのだろうか。現場改善に対して、各企業はいろいろな取り組みによって、質的な変貌をさせてきていると思う。企業を上げての体質改善活動や、改善組織体制や人材の交流など、また、改善対象の広がりに合わせて組織横断的なプロジェクトなどによって改善を進めようとしている事例もある。それらのいろいろな取り組みについても興味あるところであるが、それは別の機会に譲ることとさせていただきたい。今回は、現場改善が質的に変わっていこうとしているなかで、我々が現場改善で学んできた現場中心主義とでも言うべき大切な思想とその意味合いを再認識するためにもあくまで「現場」をテーマの中心におきたいと考えた。つまり、「現場改善」とそこで改善を行っている改善担当者に軸足を置いた視点でできるだけ考えるようにし、単なる現場改善事例ではなく、そこに現場改善の質的な変化とそれにともなういろいろな課題やそれを乗り越えて来た要素を含ませるようにしていきたいと考えた。
現場改善を担当されている方々は、コストダウンや短リードタイム化などの要求がますます厳しくなってきているなかで、一方、自分たちの従来の現場という範囲ではなかなかブレイクスルーできない状況におかれている場合もあろうかと思う。現場改善自身が従来型では成果が得にくくなってきているなかで、改善担当者がどのような苦労をされて、また、新たな取り組みとして創意工夫、新たな提案をしてきているのか、各企業の事例によってそれを垣間見ていきたいと思う。実際に改善の当事者が直面している課題を事例紹介してもらいながら、どのようなブレイクスルーを試みているのか、どのようにして改善そのものの質を変えていこうとしているのか、を共有していきたい。そこには大変な努力があると思うが、それらによって現場改善に携わっている方々の新たなヒント、あるいは励ましとなるような内容になるよう企画を行ってみた。そのような観点で、事例を見ていただけると良いと思う。今回の論壇は、現場改善について詳しい芝浦工業大学名誉教授の津村先生にお願いしました。また、ケースでは、(株)スタンレー宮城製作所取締役工場長・熊谷重典氏、(株)秋田新電元技術部部長・須藤一知氏、NEC宮城エンジニアリング企画部製造技術主任・佐藤真治氏、パイオニア(株)生産革新推進室長・刑部幸夫氏、現場改善はNEC福岡TPM推進室主任・城戸洋一氏、の方々に書いて頂き、それぞれ現場改善をキーワードにしつつも、新たな取り組みに挑戦している活動内容について書いていただいた。企業体質強化に向けて常に前向きに取り組んでいるところは新しいアイデアも豊富だし、生き生きとした現場になっていると思う。最近のスポーツ選手も、傍から見るとかなりのプレッシャーになるような状況を「楽しんでいる」ということをよく感想で言っている。現場改善も、なかなか厳しい状況のなかで、前向きに生き生きと楽しめることそのものが現場からいろいろな情報を発信できる強さとなり、企業そのものの強さの源になるのではないかと思う。