見える化の追求
2006年10月 / 247号 / 発行:2006年10月1日
目次
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巻頭言
製造力と人間力
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特集テーマのねらい(特集記事)
見える化の追求
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論壇(特集記事)
真の見える化の追求
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ケース・スタディ(特集記事)
RFIDを活用したパソコン生産の見える化
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ケース・スタディ(特集記事)
見える化へのこだわりが工場革新を支える
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ケース・スタディ(特集記事)
業務の問題点を見える化し情報システムを再構築
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ケース・スタディ(特集記事)
工作機械の遠隔監視システム
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ケース・スタディ(特集記事)
社長のあの「一言」を勘違いしたことから始まった私の挑戦
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プリズム(特集記事)
350か所を超える現場で電力の「見える化」を推進中
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プリズム(特集記事)
道路見える化計画
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プリズム(特集記事)
営業情報の見える化ともの作りへの連動
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プリズム(特集記事)
シミュレーション技術による生産現場の見える化
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会社探訪
半導体製造関連の請負事業により九州シリコンアイランドを支援する-エスティケイテクノロジー(株)-
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ビットバレーサロン
ドミニカ共和国での中小企業育成
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研究論文
経営活動の短期モニタリング指標としての会計利益とキャッシュ・フローの比較検討
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コラム(42)
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中国語でコミュニケーション(5)
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協会ニュース
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新刊紹介
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編集後記
本テーマを取り上げた背景
製造力の強化をねらいとした“業務の見える化・可視化”といったことに、昨今、大いに注目が集まっています。業務の見える化を通した解決課題のタイムリーな把握とスピーディな解決、解決課題をガラス張りにすることによる問題意識の共有化と、それに基づいた自発的な問題解決が、日本の製造企業のなかでさらに強く求められていると考えていいでしょう。しかしながら、過去の形式的なITツールの導入がそうであったように、“現場の見える化”を行う目的が不明確であったり、“見える化”の活動を開始する手前での準備活動(例えば、業務フローの分析や問題意識の刷り合わせ)が不十分なために、“見える化”を実施してみたものの、その効果が十分に表れていない事例も散見されます。また、“見える化”の活動を開始した時点では、その目的が明確であったものの、時間が経過して担当者が代わるなかで、その活動だけが引き継がれ、情報だけがただ集められているといった、表面的な“見える化”だけが継続されている事例も多いのではないでしょうか。
特集のねらい
本号では、このような問題意識のもと、企業内での業務の可視化事例を、できるだけ多くの分野から多角的に(製造現場での事例にとどまらず、間接業務や製品の設計課題にアプローチした事例、さらには、経営レベルの課題に関する可視化事例など)紹介したいと考えました。ただし、単なる“見える化”の事例紹介にとどまらず、“業務の見える化”を成功させ、社内に定着化させるためには、いかなる事前の準備、背後の活動が重要なのかを、可能な限り浮き彫りにすることを特集のねらいに据えました。Plan-Do-Check-ActionからなるPDCAサイクルにおける、Check(見える化)の部分だけに注目して、その方法だけを紹介するのではなく、Checkの部分を起点にして、サイクルを回す速度を引き上げるための仕組み作り、組織作りを明らかにすることにより、読者企業での“見える化”の活動の導入・推進に有効なヒントを提供する特集号にしたいと考えました。
特集の切り口
原稿の執筆をお願いするにあたっては、上述のような編集委員会の意図から、業務を可視化・見える化した事例を単にご紹介頂くだけでなく、可能な限り次のような5つの切り口での執筆をお願いしました。
- (1) “見える化”の活動を行うにあたっての事前準備
業務フローの分析や、見える化の目的の刷り合わせなど、どのような事前準備を実施したのか。 - (2) “見える化”の目的
何のために見える化を実施しようとしたのか。誰のための見える化なのか。見える化を通して、どのような課題に取り組もうとしたのか。 - (3) “見える化”の具体的な活動内容
見える化の具体的な方法とそこでの工夫点、可視化された情報の内容。さらに、見える化を通して得られた情報を、業務プロセスの管理・改善に結び付けるための組織体制や教育方法など。 - (4) “見える化”の活動の成果・効能
見える化活動を通して、どのような効果が得られたのか。直接的に得られた成果だけでなく、解決課題への認識・自発的な問題解決意識の高まり、さらに業務のあるべき姿の議論が活発化されたなどの、間接的な効果は? - (5) 最近の“見える化”というひとつの流行に対しての筆者自身のご意見・コメントや、“見える化”の活動を通じて得られた教訓など。
記事構成
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論壇
中部産業連盟の小坂信之氏には、“真の見える化の追及―原価低減・収益向上・経営体質強化はVMの実践にあり―”と題して、生産現場だけに止まらず、管理間接部門も視野にいれて全体最適の改善をねらう可視化手法の必要性を論じて頂いています。企業間に格差がますます広がりつつある現代において、その原因が“マネジメントシステムの格差”と“人間格差’にあると言及した上で、これを打破するためのひとつの方法論として氏が提唱しているVM(Visual Management:目で見る管理)について、具体的な進め方とそこでの注意点を非常に分かり易くまとめて頂いています。 -
ケース・スタディ
“見える化の追求”を具体的に紹介する事例(ケース)記事として、以下の5つの企業に執筆を頂いています。- ①NECパーソナルプロダクツ/須田修氏・佐藤秀和氏:工場をリアルタイムに捕捉し、見える化を実施するための情報ツールとしてRFIDタグ(電子タグ)に注目が集まっています。本稿では、このRFIDタグを製造プロセスにおける生産指示、進捗管理、電子かんばんなどに活用した事例が紹介されています。単なる事例紹介ではなく、“膨大な情報を収集しただけの見える化システム”を戒める、改善活動をベースにした情報システムの構築論が展開されています。
- ②愛知機械工業/瀧田高久氏:同杜では、1985年からのTPM活動のなかでの“見える化”を皮切りに、現在もNPW(Nissan Production Way)における同期生産への取り組みの一貫として見える化活動が展開されています。本稿では、設備総合効率向上のための見える化、時間毎出来高管理のための見える化、技術管理・技術向上のための見える化など、総合的な視野からの具体的な取り組みをご紹介頂いています。
- ③多摩化学工業/栗本進氏:同社の事例は、ERPパッケージの導入により、情報管理・生産管理・原価管理のやり方を一新して、生産進捗管理の見える化や経営課題の見える化を実現したものです。これらの見える化活動を導入・運営するための重要な切り口として、事前の目標設定におけるコンセンサスの重要性、システム導入前の改善活動の重要性が具体的に紹介されています。
- ④森精機製作所/森雅彦氏・藤嶋誠氏:同社からは、顧客先に設置された生産設備の稼動状況を見える化し、設備のメンテナンスに生かすとともに、顧客先の製造フロアにおける生産効率の向上に有効なシステムをご紹介頂きました。設備において検知された故障や不良発生の情報を、機械カルテとして顧客先や設備メーカーのサーバに記録することによりリアルタイムな設備診断が行われます。これにより、設備復旧のための遠隔操作や、設備故障の原因究明を支援し復旧に掛かるコスト(経費や時間)が削減できることが示されています。
- ⑤日本理工医学研究所/江口孝子氏:製造現場での地道な見える化活動に基づいてセル生産ラインを構築した事例をご報告頂いています。新たな変革へのチャレンジと見える化による活動のフォロー・アップが、生産システムを変革していく上での原動力となることが、事例を通して切々と書き綴られています。
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プリズム
また、今回の特集テーマに対して新たな切り口を与え、頭をリフレッシュするための短編記事として、次の4つの寄稿を頂いています。①コスト削減総合研究所/村井哲之氏:企業内で使用される電気使用量をリアルタイムに見える化し、コスト削減を図るためのハード・ソフトをご紹介頂いています。②国土交通省/田中満氏:我々が毎日使用している道路について、事故多発地点の見える化・渋滞の見える化・工事現場(工事目的)の見える化、これらの取り組みをご紹介頂いています。③東芝メディカルシステムズ/滝田法幸氏:医用診断装置・病院情報システムの製販活動内における営業活動の見える化(Customer Relationship Management)をご紹介頂いています。④UGS PLMソリューションズ/野田智孝氏:生産管理活動における“勘・コツ・経験”の重要性と、それに化わるシミュレーションソフトによる現場の見える化について氏の考えを示して頂きました。
稲田 周平/企画担当編集委員
【論壇】真の見える化の追求
中部産業連盟の小坂信之氏には、“真の見える化の追及―原価低減・収益向上・経営体質強化はVMの実践にあり―”と題して、生産現場だけに止まらず、管理間接部門も視野にいれて全体最適の改善をねらう可視化手法の必要性を論じて頂いています。企業間に格差がますます広がりつつある現代において、その原因が“マネジメントシステムの格差”と“人間格差’にあると言及した上で、これを打破するためのひとつの方法論として氏が提唱しているVM(Visual Management:目で見る管理)について、具体的な進め方とそこでの注意点を非常に分かり易くまとめて頂いています。
【ケース・スタディ】RFIDを活用したパソコン生産の見える化
工場をリアルタイムに捕捉し、見える化を実施するための情報ツールとしてRFIDタグ(電子タグ)に注目が集まっています。本稿では、このRFIDタグを製造プロセスにおける生産指示、進捗管理、電子かんばんなどに活用した事例が紹介されています。単なる事例紹介ではなく、“膨大な情報を収集しただけの見える化システム”を戒める、改善活動をベースにした情報システムの構築論が展開されています。
【ケース・スタディ】見える化へのこだわりが工場革新を支える
愛知機械工業では、1985年からのTPM活動のなかでの“見える化”を皮切りに、現在もNPW(Nissan Production Way)における同期生産への取り組みの一貫として見える化活動が展開されています。本稿では、設備総合効率向上のための見える化、時間毎出来高管理のための見える化、技術管理・技術向上のための見える化など、総合的な視野からの具体的な取り組みをご紹介頂いています。
【ケース・スタディ】業務の問題点を見える化し情報システムを再構築
多摩化学工業の事例は、ERPパッケージの導入により、情報管理・生産管理・原価管理のやり方を一新して、生産進捗管理の見える化や経営課題の見える化を実現したものです。これらの見える化活動を導入・運営するための重要な切り口として、事前の目標設定におけるコンセンサスの重要性、システム導入前の改善活動の重要性が具体的に紹介されています。
【ケース・スタディ】工作機械の遠隔監視システム
森精機製作所からは、顧客先に設置された生産設備の稼動状況を見える化し、設備のメンテナンスに生かすとともに、顧客先の製造フロアにおける生産効率の向上に有効なシステムをご紹介頂きました。設備において検知された故障や不良発生の情報を、機械カルテとして顧客先や設備メーカーのサーバに記録することによりリアルタイムな設備診断が行われます。これにより、設備復旧のための遠隔操作や、設備故障の原因究明を支援し復旧に掛かるコスト(経費や時間)が削減できることが示されています。
【ケース・スタディ】社長のあの「一言」を勘違いしたことから始まった私の挑戦
製造現場での地道な見える化活動に基づいてセル生産ラインを構築した事例をご報告頂いています。新たな変革へのチャレンジと見える化による活動のフォロー・アップが、生産システムを変革していく上での原動力となることが、事例を通して切々と書き綴られています。
【プリズム】350か所を超える現場で電力の「見える化」を推進中
企業内で使用される電気使用量をリアルタイムに見える化し、コスト削減を図るためのハード・ソフトをご紹介頂いています。
【プリズム】道路見える化計画
我々が毎日使用している道路について、事故多発地点の見える化・渋滞の見える化・工事現場(工事目的)の見える化、これらの取り組みをご紹介頂いています。
【プリズム】営業情報の見える化ともの作りへの連動
医用診断装置・病院情報システムの製販活動内における営業活動の見える化(Customer Relationship Management)をご紹介頂いています。
【プリズム】シミュレーション技術による生産現場の見える化
生産管理活動における“勘・コツ・経験”の重要性と、それに化わるシミュレーションソフトによる現場の見える化について氏の考えを示して頂きました。