工場へ行こう
2014年8月 / 286号 / 発行:2014年8月1日
目次
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巻頭言
現場力・人材力を支えるIE
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特集テーマのねらい(特集記事)
工場へ行こう
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論壇(特集記事)
工場は感動を生み出すステージだ
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ケース・スタディ(特集記事)
AGC技能五輪競技会でIEスキルを競う
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ケース・スタディ(特集記事)
「からくり改善」知恵と工夫で現場を楽しく変えていこう
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ケース・スタディ(特集記事)
ロボットがロボットをつくる工場
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ケース・スタディ(特集記事)
企画開発から生産・保守サポートまで一貫したパソコンの生産
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ケース・スタディ(特集記事)
「ナッちゃん」に学ぶモノづくりの楽しみ方
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ケース・スタディ(特集記事)
全日本製造業コマ大戦
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連載講座
「ホウ・レン・ソウ」活用により職場風土を積極性へと転換する[Ⅱ]
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会社探訪
電子基板製造工程のものづくり革新-オムロン直方(株)-
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現場改善
パワーシート組み付け工程革新
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ビットバレーサロン
効果的な物流コスト削減シナリオ
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レポート
豊田佐吉に招かれた米国人機械技師
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コラム(81)
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協会ニュース
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私のすすめる本
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編集後記
特集の背景
わが国は、終戦後驚異的なスピードで復興を成し遂げ、さらに、その後も長期にわたり技術立国として高い経済成長が続いてきました。この日本経済を支える原動力となったのが国内製造業でした。そして、1985年のプラザ合意、オイルショック、新興国の台頭、海外生産の加速、リーマンショック、さらに急激な円高の進行、東日本大震災などを経験するなかで、国内製造業の就業者比率は1970年代後半の27%をピークに減少を続け、2012年には16.5%にまで減少しています。これには海外への生産シフトに加え、少子高齢化による国内市場規模の縮小、新興国の台頭、輸入部品の増加、また、テレビなど一部のデジタル家電に見られるような製品のコモディティ化の進行による国内価格競争力の低下など、様々な要因が考えられます。しかしながら、モノづくりの現場である工場に目を向けると、そこにはハード・ソフト両面について魅力のあるモノづくり、楽しいモノづくりが行われているのも事実です。これまで「IEレビュー」誌では、幅広いIEの領域のなかのある部分に毎回フォーカスして、特集記事を組んできました。しかし、工場の魅力や楽しさそのものについて特集したことはありませんでした。そこで本特集号では、工場の魅力や楽しさについて実例をわかりやすくお伝えすることにより、工場に行ったことがない若い方々や学生の皆様も工場に行ってみたくなるような「工場に興味を持っていただける特集」にしたいと考えました。
特集の着眼点
本特集号は上記のような背景をもとに、以下の観点から原稿の執筆を依頼いたしました。
- (1) 事例は、若い方々や学生の皆様が理解できるようなわかりやすい内容とする。
- (2) 工場の魅力、楽しいモノづくりについて、どのようにして達成できたのか、工夫した点や事例を含めた内容とする。
- (3) また、特に管理・監督者がどのようなビジョンを持ち、気配りをして楽しく魅力のあるモノづくりを実現しているかを論述いただく。
- 従業員のアイデアがからくりとして生かされ、生産性向上につながった事例
- 工場のショールーム化を進めており、単純に見ていてワクワクする工場
- ロボットがロボットをつくるようなロボットの面白い使い方の事例
- こんなことを自動化している、あるいはこんなことを熟練の技で対応している事例
- 遊び心がある製品開発やライン構成の事例
- 学生の工場実習が楽しく、しかも勉強になるように工夫されている事例
記事構成
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論壇
今回の論壇は、えちぜん改善実践舎の越前行夫氏に「工場は感動を生み出すステージだ」と題して、工場の存在価値や素晴らしさについて数々の事例を交えて論述いただくとともに、今後の日本の工場の進むべき道について論を進めていただきました。まずは工場を好きになり、工場を楽しい場所にすることによって、いろいろなアイデアが出たり生き生きして、職場の活性化や笑顔があふれる夢の実現へとつながっていくと説かれています。そして、工場が感動を生み出すステージであるためには、IEをもっと活用して改善を行うことが大事で、感動を生み出す工場をめざすことが、かつて「世界の工場」と言われていたモノづくり日本を復活させる道であると示されています。 -
ケース・スタディ
- ①旭硝子:「AGC技能五輪競技会でIEスキルを競う」と題して、技能五輪競技会の種目のひとつであるIE競技について紹介いただきました。IE競技は、与えられた組み立て作業の現状に対して、チームで分析し、改善案を観客の前で実演して、改善のできばえを競う競技です。楽しくも緊張感のあるIE競技を通じて各出場チームメンバーのIEスキルの向上、観客を含めた改善の面白さの共有、チームワークの向上につながっていく事例について紹介いただいています。
- ②トヨタ自動車九州:「『からくり改善』知恵と工夫で現場を楽しく変えていこう」と題して、からくり改善道場、およびそこから生み出されたからくり設備の事例について紹介いただきました。からくり改善道場での人材育成のしくみや、電気・エアを使用せずに優れた耐久性・安全性を有する安価なからくり設備の製作を通して、自分たちで現場を楽しく変えていく活動内容が紹介されています。ムリ・ムダを徹底的に削除した同社の改善へのあくなき取り組みが読み取れます。
- ③安川電機:「ロボットがロボットをつくる工場」と題して、ロボットによるロボットの組み立てラインをメインに紹介いただきました。2台のロボットによる協調作業や、人間の腕と同じように2本の腕を有する双腕ロボットによる組み立て、人間の手と同じように繊細な掴み方ができるロボットハンドや視覚センサを使ったロボットなど、より人間の働きに近くなっていくロボット応用技術の面白さ・深化・品質保証の例が示されています。
- ④NECパーソナルコンピュータ:「企画開発から生産・保守サポートまで一貫したパソコンの生産」と題して、米沢事業場におけるパソコン生産の取り組みについて紹介いただきました。部品調達から組み立て・検査・梱包・出荷まで1人1人が知恵を出し合い改善の積み重ねと先進のIT活用によって効率的な生産体制を構築している事例を紹介いただいています。
- ⑤産業能率大学の斎藤文先生には「『ナッちゃん』に学ぶモノづくりの楽しみ方」と題して、「スーパージャンプ」や「オースーパージャンプ」に連載された女性主人公「ナッちゃん」による下町鉄工所を舞台とした、モノづくりを主題とした漫画の作者であるたなかじゅん氏への取材をしていただきました。これまで暗いイメージでしか描かれていなかった下町鉄工所について、「ナッちゃん」によってモノづくりの面白さ楽しさを伝える熱い想いが伝わってきます。また、たなか氏は大田区の職人さんたちと一緒にいろいろな面白い機械を製作されており、実際のモノづくりの楽しさについても紹介いただいています。モノづくりは本来楽しいものであり、大人や経営者など上の人たちがまずモノづくりに自信をもって面白がるという意識を持つことが大事で、その姿が子供や社員に伝わって若い人を育て新しい動きが始まると説かれています。
- ⑥大阪工業大学の皆川健多郎先生には「全日本製造業コマ大戦」と題して、全国の中小製造業が自社の誇りをかけて製作したベーゴマによる戦いの近畿ブロック予選について、実際に大会運営に携わっておられる松田英成氏および鈴木健史氏から取材をいただきました。そこには大人が技術をみがきベーゴマつくり(モノづくり)に真剣に取り組み、勝負にこだわり、くやしさ、楽しさがあり、結果としてモノづくりが広がり仲間が増えていく様子が紹介されています。そして、コマ大戦を契機として、働くことを通じて自分を高めて楽しく有意義に豊かな生き方ができる人材が育ち、そういう人たちが社会に役立つ自社製品を提供してくれるような会社にしたいと熱く語られています。
おわりに
今回の特集を通じて、工場の面白さと工場は本来楽しいものであるということが改めて伝わってきました。また、まず工場を好きになり、工場を能動的に楽しい場所とし、楽しむことによって、いろいろなアイデアが出たり感動が生まれコミュニケーションも良くなり、工場がさらにステップアップするということが確信できました。そして、このベースになるのがIEであり、技術・技能の研鑽の意欲であると思われます。今まで工場に行ったことがない方々も、本特集を通じて工場の楽しさを感じていただき、工場に行っていただければ幸いです。
富田 耕市/企画担当編集委員
【論壇】工場は感動を生み出すステージだ
今回の論壇は、えちぜん改善実践舎の越前行夫氏に「工場は感動を生み出すステージだ」と題して、工場の存在価値や素晴らしさについて数々の事例を交えて論述いただくとともに、今後の日本の工場の進むべき道について論を進めていただきました。まずは工場を好きになり、工場を楽しい場所にすることによって、いろいろなアイデアが出たり生き生きして、職場の活性化や笑顔があふれる夢の実現へとつながっていくと説かれています。そして、工場が感動を生み出すステージであるためには、IEをもっと活用して改善を行うことが大事で、感動を生み出す工場をめざすことが、かつて「世界の工場」と言われていたモノづくり日本を復活させる道であると示されています。
【ケース・スタディ】AGC技能五輪競技会でIEスキルを競う
旭硝子:「AGC技能五輪競技会でIEスキルを競う」と題して、技能五輪競技会の種目のひとつであるIE競技について紹介いただきました。IE競技は、与えられた組み立て作業の現状に対して、チームで分析し、改善案を観客の前で実演して、改善のできばえを競う競技です。楽しくも緊張感のあるIE競技を通じて各出場チームメンバーのIEスキルの向上、観客を含めた改善の面白さの共有、チームワークの向上につながっていく事例について紹介いただいています。
【ケース・スタディ】「からくり改善」知恵と工夫で現場を楽しく変えていこう
トヨタ自動車九州:「『からくり改善』知恵と工夫で現場を楽しく変えていこう」と題して、からくり改善道場、およびそこから生み出されたからくり設備の事例について紹介いただきました。からくり改善道場での人材育成のしくみや、電気・エアを使用せずに優れた耐久性・安全性を有する安価なからくり設備の製作を通して、自分たちで現場を楽しく変えていく活動内容が紹介されています。ムリ・ムダを徹底的に削除した同社の改善へのあくなき取り組みが読み取れます。
【ケース・スタディ】ロボットがロボットをつくる工場
安川電機:「ロボットがロボットをつくる工場」と題して、ロボットによるロボットの組み立てラインをメインに紹介いただきました。2台のロボットによる協調作業や、人間の腕と同じように2本の腕を有する双腕ロボットによる組み立て、人間の手と同じように繊細な掴み方ができるロボットハンドや視覚センサを使ったロボットなど、より人間の働きに近くなっていくロボット応用技術の面白さ・深化・品質保証の例が示されています。
【ケース・スタディ】企画開発から生産・保守サポートまで一貫したパソコンの生産
NECパーソナルコンピュータ:「企画開発から生産・保守サポートまで一貫したパソコンの生産」と題して、米沢事業場におけるパソコン生産の取り組みについて紹介いただきました。部品調達から組み立て・検査・梱包・出荷まで1人1人が知恵を出し合い改善の積み重ねと先進のIT活用によって効率的な生産体制を構築している事例を紹介いただいています。
【ケース・スタディ】「ナッちゃん」に学ぶモノづくりの楽しみ方
産業能率大学の斎藤文先生には「『ナッちゃん』に学ぶモノづくりの楽しみ方」と題して、「スーパージャンプ」や「オースーパージャンプ」に連載された女性主人公「ナッちゃん」による下町鉄工所を舞台とした、モノづくりを主題とした漫画の作者であるたなかじゅん氏への取材をしていただきました。これまで暗いイメージでしか描かれていなかった下町鉄工所について、「ナッちゃん」によってモノづくりの面白さ楽しさを伝える熱い想いが伝わってきます。また、たなか氏は大田区の職人さんたちと一緒にいろいろな面白い機械を製作されており、実際のモノづくりの楽しさについても紹介いただいています。モノづくりは本来楽しいものであり、大人や経営者など上の人たちがまずモノづくりに自信をもって面白がるという意識を持つことが大事で、その姿が子供や社員に伝わって若い人を育て新しい動きが始まると説かれています。
【ケース・スタディ】全日本製造業コマ大戦
大阪工業大学の皆川健多郎先生には「全日本製造業コマ大戦」と題して、全国の中小製造業が自社の誇りをかけて製作したベーゴマによる戦いの近畿ブロック予選について、実際に大会運営に携わっておられる松田英成氏および鈴木健史氏から取材をいただきました。そこには大人が技術をみがきベーゴマつくり(モノづくり)に真剣に取り組み、勝負にこだわり、くやしさ、楽しさがあり、結果としてモノづくりが広がり仲間が増えていく様子が紹介されています。そして、コマ大戦を契機として、働くことを通じて自分を高めて楽しく有意義に豊かな生き方ができる人材が育ち、そういう人たちが社会に役立つ自社製品を提供してくれるような会社にしたいと熱く語られています。