IoT:IEとデジタル技術の融合
2020年3月 / 314号 / 発行:2020年3月1日
- 5S
- SDGs
- からくり
- サプライチェーン
- ムダ取り
- ライン設計
- リードタイム短縮
- レイアウト改善
- 人材育成
- 働き方改革
- 原価管理
- 在庫管理
- 多様性
- 安全
- 小集団活動
- 標準作業
- 標準時間
- 生産性
- 生産計画
- 納期管理
- 自動化
目次
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巻頭言
改善を進めるために必要な技術
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2020年度の特集テーマについて
2020年度の特集テーマについて
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特集テーマのねらい(特集記事)
IoT:IEとデジタル技術の融合
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論壇(特集記事)
先進事例と未来戦略デザイン志向のIoTハンズオン実習の設計と実証
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ケース・スタディ(特集記事)
IoTツールを活用した現場改善の推進
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ケース・スタディ(特集記事)
強い現場は“切れ目のない改善と素早いグローバル展開”
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ケース・スタディ(特集記事)
IoTを活用した生産改善の取り組み
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ケース・スタディ(特集記事)
生産・工程計画の業務プロセス改革
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ケース・スタディ(特集記事)
レンゴー式生産管理システム「REVIC」と電子チャート「RenChart」の効果
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ケース・スタディ(特集記事)
モノづくり力強化のためのIoT活用
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ケース・スタディ(特集記事)
自社IoT製品活用による現場改善
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テクニカル・ノート(特集記事)
OODAループ
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プリズム(特集記事)
バーチャル技術による認知空間の拡大を通じたIE能力の強化
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プリズム(特集記事)
滋賀大学の進めるデータサイエンス教育研究
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連載講座
“TPM”考[Ⅶ]
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会社探訪
欲しい時に欲しいものを欲しいだけ提供するものづくりの取り組み-(株)最上インクス-
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現場改善
製造現場改善へのデジタル技術導入
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コラム(109)
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協会ニュース
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私のすすめる本
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
多種少量生産、ライフサイクルの短縮化、生産形態の変更など、モノづくり現場では変化する状況に対応しつつ、改善活動を加速する必要性がますます高まっている。現場の情報を集め、見える化を行ない、そして分析、改善案を提案し、実行するという一連の活動を高速化することが求められているといえる。高速化する手段として、IoT、ロボット、ビッグデータやAIといった最新の技術に注目が集まっている。企業内ですでに、または新たに収集したデータを活用することにより、データは価値ある情報へと進化する。さらに、その情報は改善活動の活性化を促し、生産性や営業利益率を向上させ、経営貢献といった成果につなげることができる。実際、これらの手段を活用して成果を収めている企業の取り組みは、本誌でもこれまでに多く掲載をしている。しかし、IoTを導入したにもかかわらず成果に結びつけることができていないといったケースが残念ながら多々見受けられる。さらに何より重要な現場のモチベーションが、これらの導入により低下してしまっているケースまでも散見される。従来の地道な改善活動に活用するといった手段であったはずのIoTの導入が、いつの間にか目的となっていることが、その原因の1つとして考えられる。IEの本質的なねらいは、仕事のやり方や時間の使い方を工夫し、豊かで実りある社会を築くことにある。仕事のやり方や時間の使い方を工夫する中において、IEとデジタル技術の融合を進める、このような考え方が重要となる。
そこで本特集では、IEの視点から、様々なモノづくり現場におけるデジタル技術(IT/ICT)の活用事例を集めることにより、IEとデジタル技術の融合がIoTなのか、IoTによりIEとデジタル技術の融合を進めるのか、といった点について理解を深めことを目的として企画することとした。
記事構成
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論壇
青山学院大学の玉木欽也先生、青山学院ヒューマン・イノベーション・コンサルティングの小野好之氏に、「先進事例と未来戦略デザイン志向のIoTハンズオン実習の設計と実証」と題して執筆いただいた。
記事では、デジタル化生産革新は、外部主導ではなく、自ら先端技術を学びながら、生産現場と生産革新リーダーたちが、未来工場のイメージを話し合うことから始まるもの、との立ち位置より述べられている。そのために必要となるデジタル化生産革新を進める人材育成は、従来型の座学や事例紹介、工場見学ではなく、ハンズオン実習や異業種交流の学び合いから生まれると指摘している。その事例として、日本経営工学会と日本IE 協会が共同開催した産学連携研究交流会の分科会にて実施したハンズオン実習ならびにワークショップが紹介されている。
また、デジタル化生産革新を推進するリーダーを“未来戦略デザイン・システムクリエーター”と称して、その育成に向けた体系的なハンズオン実習プログラムの全体像も示されている。IoTは作り手の立場で一過性に終わらせるのではなく、使い手の観点で正しく再評価し実務の中に定着させるタイミングにきている。このことからも、IE、経営工学の視点からこれら技術を学ぶ研修を開発する意義の重要性が指摘され、まとめられている。 -
ケース・スタディ
- ①NECプラットフォームズの齋藤淳也氏に「IoTツールを活用した現場改善の推進」と題して執筆いただいた。
同社では、「流れ」を重視し、「もの」と「情報」をつなぐことを改善の基軸として、レイアウト改善、物流改善、棚卸改善、そしてライン改善をこれまで進めてきた。その中で、本記事ではIoTツールを活用して現場の事象をデータとして収集し、改善活動に活用した事例、生産準備までさかのぼったライン設計の効率化の取り組みが紹介されている。 - ②ダイキン工業の小倉博敏氏に「強い現場は“切れ目のない改善と素早いグローバル展開”」と題して執筆いただいた。
同社では、1978年よりTPS(トヨタ生産方式)をベースにしたPDS(Production for Daikin Ststem)と命名した生産革新活動を行なっている。そこに近年はIoTを取り入れ、業務だけでなく、改善そのものの効率化を推進している。あくまでIEがベースであり、IoTを改善の1つの手段であることを念頭に置き取り組まれた、グローバル改善事例集、技能伝承の事例などが紹介されている。 - ③DMG森精機の堀井賢治氏に「IoTを活用した生産改善の取り組み」と題して執筆いただいた。
同社では、近年の機種数の増加にともない、多品種少量生産にいかに柔軟に対応するかが課題となってきた。本稿では、生産管理のツールであるバーコードリーダーを活用して生産性や品質の向上を推進した事例が紹介されている。 - ④島津製作所の井上敬治氏、杉山丈夫氏、島津プレシジョンテクノロジーの北川隆明氏、大久保晃氏に「生産・工程計画の業務プロセス改革」と題して執筆いただいた。
島津プレシジョンテクノロジーでは、主力製品として油圧ギアポンプを月に約50,000台を生産している。11年より設備稼働用表示灯による情報収集システムを導入し、稼働状況をモニタリングしている。近年、品種の増加による製造オーダー発行業務の増大、経験の差による作業品質の差などの問題が生じ、その解決のために、新業務プロセス立案のプロジェクトが立ち上げられた。本稿では、RPAの活用も含めた、その具体的な取り組みの内容が紹介されている。 - ⑤レンゴーの千福地深氏に「レンゴー式生産管理システム『REVIC』と電子チャート『RenChart』の効果」と題して執筆いただいた。
レンゴーグループでは、1909年に日本で初めて段ボールを製造して以来、市場のニーズに応えてきた。段ボールの生産は、基本的に受注生産であり、かつ受注から納品までの平均リートタイムは2日と短く、その状況に対応することが求められている。その対策の1つとして、レンゴーでは数年前からデジタル化に取り組んでいる。記事では、生産管理システム「REVIC」、そして電子チャート「RenChart」ならびにその効果を紹介している。 - ⑥住友電気工業の濱田徳亜氏に「モノづくり力強化のためのIoT」と題して執筆いただいた。
同社では、組立型、材料型、そして長モノ型の3つの生産形態に分けて、生産システムの構築ならびに改善に取り組み、モノづくり力の強化を行なっている。その中で、IoT活用は、モノづくりの支援といった明確な位置づけをしている。その考えの下、成果を出している設備稼働率の向上、検査の自動化、そして品質の向上といった事例を含めて、取り組みの内容を紹介している。 - ⑦パトライトの橋木昭一氏に「自社IoT製品活用による現場改善」と題して執筆いただいた。
同社では、回転警告灯(パトライト)の設計、製造、販売を行なっている。従来、知らせることを目的とした自社製品である信号灯から、記録する信号灯へ改良している。さらに、その製品を自社の製造現場にて活用することにより、“魅せる化工場”として工場見学会も実施している。以上の内容を事例も含めて紹介している。
- ①NECプラットフォームズの齋藤淳也氏に「IoTツールを活用した現場改善の推進」と題して執筆いただいた。
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テクニカル・ノート
神戸大学の原田勉先生に「OODAループ」と題して執筆いただいた。
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プリズム
- ①レクサー・リサーチの中村昌弘氏に「バーチャル技術による認知空間の拡大を通じたIE能力の強化」と題して執筆いただいた。
- ②滋賀大学の竹村彰通先生、石川由羽先生に「滋賀大学の進めるデータサイエンス教育研究」と題して執筆いただいた。
おわりに
今回の特集を通じて、IoTの先進事例に共通する点として、IEの視点の存在が確認された。改善活動の延長線上にIoTは1つの手段として存在し、IEとデジタル技術の融合といった見方・考え方の重要性の理解を深めることができた。
本特集号に際して、ご多忙の折にも関わらず、記事の執筆に関してご協力をいただいた執筆者の皆さまに、心より感謝申し上げ結びとしたい。
【論壇】先進事例と未来戦略デザイン志向のIoTハンズオン実習の設計と実証
青山学院大学の玉木欽也先生、青山学院ヒューマン・イノベーション・コンサルティングの小野好之氏に、「先進事例と未来戦略デザイン志向のIoTハンズオン実習の設計と実証」と題して執筆いただいた。
記事では、デジタル化生産革新は、外部主導ではなく、自ら先端技術を学びながら、生産現場と生産革新リーダーたちが、未来工場のイメージを話し合うことから始まるもの、との立ち位置より述べられている。そのために必要となるデジタル化生産革新を進める人材育成は、従来型の座学や事例紹介、工場見学ではなく、ハンズオン実習や異業種交流の学び合いから生まれると指摘している。その事例として、日本経営工学会と日本IE 協会が共同開催した産学連携研究交流会の分科会にて実施したハンズオン実習ならびにワークショップが紹介されている。
また、デジタル化生産革新を推進するリーダーを“未来戦略デザイン・システムクリエーター”と称して、その育成に向けた体系的なハンズオン実習プログラムの全体像も示されている。IoTは作り手の立場で一過性に終わらせるのではなく、使い手の観点で正しく再評価し実務の中に定着させるタイミングにきている。このことからも、IE、経営工学の視点からこれら技術を学ぶ研修を開発する意義の重要性が指摘され、まとめられている。
【ケース・スタディ】IoTツールを活用した現場改善の推進
NECプラットフォームズの齋藤淳也氏に「IoTツールを活用した現場改善の推進」と題して執筆いただいた。
同社では、「流れ」を重視し、「もの」と「情報」をつなぐことを改善の基軸として、レイアウト改善、物流改善、棚卸改善、そしてライン改善をこれまで進めてきた。その中で、本記事ではIoTツールを活用して現場の事象をデータとして収集し、改善活動に活用した事例、生産準備までさかのぼったライン設計の効率化の取り組みが紹介されている。
【ケース・スタディ】強い現場は“切れ目のない改善と素早いグローバル展開
ダイキン工業の小倉博敏氏に「強い現場は“切れ目のない改善と素早いグローバル展開”」と題して執筆いただいた。
同社では、1978年よりTPS(トヨタ生産方式)をベースにしたPDS(Production for Daikin Ststem)と命名した生産革新活動を行なっている。そこに近年はIoTを取り入れ、業務だけでなく、改善そのものの効率化を推進している。あくまでIEがベースであり、IoTを改善の1つの手段であることを念頭に置き取り組まれた、グローバル改善事例集、技能伝承の事例などが紹介されている。
【ケース・スタディ】IoTを活用した生産改善の取り組み
DMG森精機の堀井賢治氏に「IoTを活用した生産改善の取り組み」と題して執筆いただいた。
同社では、近年の機種数の増加にともない、多品種少量生産にいかに柔軟に対応するかが課題となってきた。本稿では、生産管理のツールであるバーコードリーダーを活用して生産性や品質の向上を推進した事例が紹介されている。
【ケース・スタディ】生産・工程計画の業務プロセス改革
島津製作所の井上敬治氏、杉山丈夫氏、島津プレシジョンテクノロジーの北川隆明氏、大久保晃氏に「生産・工程計画の業務プロセス改革」と題して執筆いただいた。
島津プレシジョンテクノロジーでは、主力製品として油圧ギアポンプを月に約50,000台を生産している。11年より設備稼働用表示灯による情報収集システムを導入し、稼働状況をモニタリングしている。近年、品種の増加による製造オーダー発行業務の増大、経験の差による作業品質の差などの問題が生じ、その解決のために、新業務プロセス立案のプロジェクトが立ち上げられた。本稿では、RPAの活用も含めた、その具体的な取り組みの内容が紹介されている。
【ケース・スタディ】 レンゴー式生産管理システム「REVIC」と電子チャート「RenChart」の効果
レンゴーの千福地深氏に「レンゴー式生産管理システム『REVIC』と電子チャート『RenChart』の効果」と題して執筆いただいた。
レンゴーグループでは、1909年に日本で初めて段ボールを製造して以来、市場のニーズに応えてきた。段ボールの生産は、基本的に受注生産であり、かつ受注から納品までの平均リートタイムは2日と短く、その状況に対応することが求められている。その対策の1つとして、レンゴーでは数年前からデジタル化に取り組んでいる。記事では、生産管理システム「REVIC」、そして電子チャート「RenChart」ならびにその効果を紹介している。
【ケース・スタディ】モノづくり力強化のためのIoT活用
住友電気工業の濱田徳亜氏に「モノづくり力強化のためのIoT」と題して執筆いただいた。
同社では、組立型、材料型、そして長モノ型の3つの生産形態に分けて、生産システムの構築ならびに改善に取り組み、モノづくり力の強化を行なっている。その中で、IoT活用は、モノづくりの支援といった明確な位置づけをしている。その考えの下、成果を出している設備稼働率の向上、検査の自動化、そして品質の向上といった事例を含めて、取り組みの内容を紹介している。
【ケース・スタディ】自社IoT製品活用による現場改善
パトライトの橋木昭一氏に「自社IoT製品活用による現場改善」と題して執筆いただいた。
同社では、回転警告灯(パトライト)の設計、製造、販売を行なっている。従来、知らせることを目的とした自社製品である信号灯から、記録する信号灯へ改良している。さらに、その製品を自社の製造現場にて活用することにより、“魅せる化工場”として工場見学会も実施している。以上の内容を事例も含めて紹介している。