SDGs時代のモノづくり
2020年8月 / 316号 / 発行:2020年8月1日
目次
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巻頭言
モノづくりを極める
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特集テーマのねらい(特集記事)
SDGs時代のモノづくり
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解説(特集記事)
SDGs解説
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論壇(特集記事)
SDGs時代のモノづくり
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ケース・スタディ(特集記事)
SDGsへの取り組みは「未来をつくっていく」活動
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ケース・スタディ(特集記事)
120年以上、社会課題と向き合い商品を開発
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ケース・スタディ(特集記事)
環境配慮設計などを通じて「持続可能な社会・環境づくり」に貢献
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ケース・スタディ(特集記事)
下流フードサービスSCMのSDGs食品ロス削減方策
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連載「モノづくり現場でキラリと輝く女性たち」
IEは生産シミュレーションの基本
業務や資格取得のための学び直しを通じあらためてIEの奥深さを実感
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コラム(111)
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協会ニュース
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
2015年9月の国連サミットで採択された「SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称」は、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標であり、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されており、我々モノづくり企業にとっても関連深いキーワードも並んでいます。
日本でも政府の推進強化もあり、近年SDGsに対する認知・理解は加速の動きがみられます。そこで今回、「SDGs時代のモノづくり」を企画し、「IEレビュー」編集会議でも議論を重ねましたが、編集委員の所属企業の実態も含め、各企業の状況を探ってみると、多くは試行錯誤の段階であり、SDGsの浸透も含め、その進め方に悩んでいる企業が多いことの実態も再認識しました。
一方で、SDGsへの理解を編集会議内で深めるにつれ、単に社会的使命として掲げるだけでなく、生産活動に上手に取り込むことで、新たなビジネスチャンスにもつながる指標・活動になりえることも再認識しました。
そこで本特集では、SDGsへの取り組みを幅広く紹介することで、SDGsは「難しいもの」、「特別なもの」ではなく「有効である」ことを伝えたいと考え、具体的な成果をあげている事例に留まらず、「SDGsとは何か」の再認識も含め、幅広く特集として取り上げることとし、以下の2つの視点での事例を集めることにしました。
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視点1:経営トップからの視点(全体的な視点)
・この機会をチャンスと捉えて、いかに組織内に広め、全社活動と連動させているか
・どのようにして推進力を高めレベルアップを図るか
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視点2:現場からの視点(具体的な視点)
・SDGs取り組みのコンセプトや活動の方向性、重要課題(マテリアリティ)の考え方・生産・物流プロセスでの改善事例
・S経営層・マネジメント層の意識と現場のすり合わせ
・Sサステナビリティの指標を入れた改善活動
・SQCD成果指標やIE活動とSDGsの対応づけ
・S企業や国を越えた業界やグローバルでの取り組み
・SSDGsを意識した人材育成・職場づくり(女性の活躍する職場づくりなど)
・S工場の見える化など外部ステークホルダーを意識した生産活動
・S環境に関連する事例など
記事構成
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論壇
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)代表理事の有馬利男氏に「SDGs時代のモノづくり」をテーマにお話をお聞きしました。
有馬氏は富士ゼロックスの経営トップ経験者でもあり、その経験も踏まえ、SDGsの成立に関わる経緯から企業の現状、今後の取り組みポイントまで幅広く紹介いただきました。特に、有馬氏の提唱している“5つのレンズ”をかけ替えながら経営プロセスに取り込むという見方は非常に参考になります。今後のポストコロナの時代において、私たちの働き方も変わってきますが、レンズをかけ替えながら、新たな“SDGs”への取り組み方を探る必要性を示唆されています。
なお、GCNJの協力をいただき、「SDGs解説」も紹介しています。「SDGsとは何か」から、日本企業の取り組み状況も具体的データで掲載しています。さらには今後、いかに取り組むべきかのポイントも紹介していますので、ぜひ、参考にしていただけると幸いです。 -
ケース・スタディ
- ①東京エレクトロンで全社推進を担当されているCSR推進室の荻野裕史氏にお話をお聞きしました。
東京エレクトロンは、半導体およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置のリーディングカンパニーとしてグローバルに事業展開をしています。テーマ名に「SDGsへの取り組みは『未来をつくっていく』活動」、副題に、~産業や社会の課題に対し、事業を通じて解決策を提案していきたい~とあるように、中長期視点で重要かつ優先的に取り組むべき重要課題を「マテリアリティ」として5つ定義しながら、事業とSDGsを上手にリンクさせている事例や推進の悩みごと、グローバル視点での推進のポイントまで、幅広く紹介いただいています。 - ②ライオンで全社推進を担当されているCSV推進室の小和田みどり氏と篠笥紀勝氏にお話をお聞きしました。
ライオンは、ヘルスケアのリーディングカンパニーとして私たちの生活に欠かせない商品を提供しています。テーマ名に「120年以上、社会課題と向き合い商品を開発」、副題に、~ SDGsと紐づけることでサステナブル活動にさらなる弾み~とあるように、これまでの取り組みをベースに上手に活かし、SDGsとの関連性を紐づけ、不足している部分を明確にして中長期ビジョンに結びつけた活動が展開されています。例えば、初期には経営層に対し、外部講師による勉強会(他社事例や社会動向)で具体的に自社の位置づけを振り返ることに重点を置いて進めるなど、経営層から社員層までの幅広い推進事例も紹介いただきました。 - ③西松建設の橋本守氏・井口美佳氏(CSR企画課)、長谷川真也氏(環境品質部)、浅井晃氏(意匠設計部)の4氏にお話をお聞きしました。
西松建設は、「未来を創る現場力」をコーポレートスローガンに、総合建設業として140年以上の歴史を持ち、ダムやトンネル、公共施設・都市再開発などの多くの実績を誇ります。テーマ名に「地球環境に与える影響が大きい建設業だからこそ、環境配慮設計などを通じて『持続可能な社会・環境づくり』に貢献」とあるように、現場の事例を中心に、4氏の所属部門での立場から様々な視点でお話を紹介いただきました。インタビュー中、“当社はもともと「やらなくてはならないこと」をやっている。「SDGsとして何かやっていますか」と聞かれたら、クビをかしげる社員は多いかもしれませんが、取り組むべきことには取り組んでいる状況”という紹介があります。私たちがSDGsに取り組む上でも、同じことが意識せずとも行なわれていることは大切にしたいと思いました。 - ④青山学院大学の玉木欽也氏、シダックスの安藤秀子氏に「下流フードサービスSCMのSDGs食品ロス削減方策」と題して執筆いただきました。
副題に、~産学連携によるSDGs余剰食材活用プロジェクト~とあるように、青山学院ヒューマン・イノベーション・コンサルティングで実施している2つの産学連携プロジェクトについて紹介されています。
1つ目は、「社員食堂」を事例に、食べられるのに捨てられてしまう“食品ロス”の発生ポイントをSCMの流れにそって把握、原因の発見を通じ、体系的に活用可能なBOM(部品構成表)の作成・活用方法に関する紹介。
2つ目は、野菜や果物が、色合い・変形・キズなどで市場に流通されない余剰食材の活用し、「SDGs抵触レシピー」や「SDGsテイクアウト弁当」などの企画をして、付加価値をつけて提供・販売するビジネスモデルのプロジェクトです。
SDGsには17のゴール・169のターゲットがありますが、その中で「食品ロス削減」をテーマ化し、SCM軸で可視化して、分析を進めています。このようにSDGsを紐解き、取り組みテーマを導き出し、取り組むケースとして非常に興味深い事例となっています。
- ①東京エレクトロンで全社推進を担当されているCSR推進室の荻野裕史氏にお話をお聞きしました。
まとめ
今回の特集に当たり、新型コロナウイルスの環境下で各社がその対応に追われる中、原稿の執筆依頼もままならず発刊自体も厳しい状況も考えられましたが、この環境下を逆に利用し、WEBのインタビュー形式を取り入れ、原稿にまとめ上げることにしました。結果として、当初に設定した視点・ポイントに基づいて同様の視点でインタビューできたこと、またインタビューを担当した編集委員自身も自らの企業・大学における課題認識も踏まえたインタビューとなったことから、これまでの「IEレビュー」誌とは少し違うケース・スタディになっていると思います。今回の取り組みが、いい意味で、読者の皆様の知りたい部分の深掘りにつながり、共感いただける部分が1つでも多くあれば幸いです。
最後に、この新型コロナウイルスの環境にも関わらず、本テーマの趣旨に賛同いただき、インタビューおよび原稿執筆に協力いただいた皆様にはあらためて心より御礼申し上げます。
【論壇】SDGs時代のモノづく
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)代表理事の有馬利男氏に「SDGs時代のモノづくり」をテーマにお話をお聞きしました。
有馬氏は富士ゼロックスの経営トップ経験者でもあり、その経験も踏まえ、SDGsの成立に関わる経緯から企業の現状、今後の取り組みポイントまで幅広く紹介いただきました。特に、有馬氏の提唱している“5つのレンズ”をかけ替えながら経営プロセスに取り込むという見方は非常に参考になります。今後のポストコロナの時代において、私たちの働き方も変わってきますが、レンズをかけ替えながら、新たな“SDGs”への取り組み方を探る必要性を示唆されています。
なお、GCNJの協力をいただき、「SDGs解説」も紹介しています。「SDGsとは何か」から、日本企業の取り組み状況も具体的データで掲載しています。さらには今後、いかに取り組むべきかのポイントも紹介していますので、ぜひ、参考にしていただけると幸いです。
【ケース・スタディ】SDGsへの取り組みは「未来をつくっていく」活動
東京エレクトロンで全社推進を担当されているCSR推進室の荻野裕史氏にお話をお聞きしました。
東京エレクトロンは、半導体およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置のリーディングカンパニーとしてグローバルに事業展開をしています。テーマ名に「SDGsへの取り組みは『未来をつくっていく』活動」、副題に、~産業や社会の課題に対し、事業を通じて解決策を提案していきたい~とあるように、中長期視点で重要かつ優先的に取り組むべき重要課題を「マテリアリティ」として5つ定義しながら、事業とSDGsを上手にリンクさせている事例や推進の悩みごと、グローバル視点での推進のポイントまで、幅広く紹介いただいています。
【ケース・スタディ】120年以上、社会課題と向き合い商品を開発
ライオンで全社推進を担当されているCSV推進室の小和田みどり氏と篠笥紀勝氏にお話をお聞きしました。
ライオンは、ヘルスケアのリーディングカンパニーとして私たちの生活に欠かせない商品を提供しています。テーマ名に「120年以上、社会課題と向き合い商品を開発」、副題に、~ SDGsと紐づけることでサステナブル活動にさらなる弾み~とあるように、これまでの取り組みをベースに上手に活かし、SDGsとの関連性を紐づけ、不足している部分を明確にして中長期ビジョンに結びつけた活動が展開されています。例えば、初期には経営層に対し、外部講師による勉強会(他社事例や社会動向)で具体的に自社の位置づけを振り返ることに重点を置いて進めるなど、経営層から社員層までの幅広い推進事例も紹介いただきました。
【ケース・スタディ】環境配慮設計などを通じて「持続可能な社会・環境づくり」に貢献
西松建設の橋本守氏・井口美佳氏(CSR企画課)、長谷川真也氏(環境品質部)、浅井晃氏(意匠設計部)の4氏にお話をお聞きしました。
西松建設は、「未来を創る現場力」をコーポレートスローガンに、総合建設業として140年以上の歴史を持ち、ダムやトンネル、公共施設・都市再開発などの多くの実績を誇ります。テーマ名に「地球環境に与える影響が大きい建設業だからこそ、環境配慮設計などを通じて『持続可能な社会・環境づくり』に貢献」とあるように、現場の事例を中心に、4氏の所属部門での立場から様々な視点でお話を紹介いただきました。インタビュー中、“当社はもともと「やらなくてはならないこと」をやっている。「SDGsとして何かやっていますか」と聞かれたら、クビをかしげる社員は多いかもしれませんが、取り組むべきことには取り組んでいる状況”という紹介があります。私たちがSDGsに取り組む上でも、同じことが意識せずとも行なわれていることは大切にしたいと思いました。
【ケース・スタディ】下流フードサービスSCMのSDGs食品ロス削減方策
青山学院大学の玉木欽也氏、シダックスの安藤秀子氏に「下流フードサービスSCMのSDGs食品ロス削減方策」と題して執筆いただきました。
副題に、~産学連携によるSDGs余剰食材活用プロジェクト~とあるように、青山学院ヒューマン・イノベーション・コンサルティングで実施している2つの産学連携プロジェクトについて紹介されています。
1つ目は、「社員食堂」を事例に、食べられるのに捨てられてしまう“食品ロス”の発生ポイントをSCMの流れにそって把握、原因の発見を通じ、体系的に活用可能なBOM(部品構成表)の作成・活用方法に関する紹介。
2つ目は、野菜や果物が、色合い・変形・キズなどで市場に流通されない余剰食材の活用し、「SDGs抵触レシピー」や「SDGsテイクアウト弁当」などの企画をして、付加価値をつけて提供・販売するビジネスモデルのプロジェクトです。
SDGsには17のゴール・169のターゲットがありますが、その中で「食品ロス削減」をテーマ化し、SCM軸で可視化して、分析を進めています。このようにSDGsを紐解き、取り組みテーマを導き出し、取り組むケースとして非常に興味深い事例となっています。