改善活動における余裕のマネジメント
2020年10月 / 317号 / 発行:2020年10月1日
目次
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巻頭言
環境変化に柔軟に対応するためのIE
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特集テーマのねらい(特集記事)
標準資料の作成・更新・活用
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論壇(特集記事)
標準時間設定の考え方とその方法
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ケース・スタディ(特集記事)
A-TWIにおける標準化活動について
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ケース・スタディ(特集記事)
業務改善をITで解決!‟動作分析が変える、タイムプリズム効果”
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会社探訪
耐圧検査工程におけるエアーブロー作業自動化による生産性と安全性の向上
- TOTOアクアテクノ(株) -
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現場改善
研磨品質における熟練技術を不良ゼロで設備化へ
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連載「モノづくり現場でキラリと輝く女性たち」
改善は現場やサプライヤーに喜ばれるやりがいがある仕事
IEでみんなに笑顔を届けたい、そして「工場=3K職場」のイメージを払拭したい
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コラム(112)
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協会ニュース
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
19世紀末から20世紀初頭にかけて、F.W. テイラーは、当時の米国で蔓延して、工場管理者を悩ませていた組織的怠業をなんとかしようと、作業研究を中心とした科学的管理法を提唱しました。作業研究では、時間研究と動作研究によって、1日の適正な標準的な仕事量を科学的な方法で把握して、経験や勘によって決められていた1日の仕事量を適正化しました。
サーブリック記号を考案したことで知られるF.B. ギルブレスは、レンガ積みの作業動作をつぶさに観察して、それまで18あった動作を5つに減らすだけでなく、木枠や可動式の足場などの道具を使用するようにするなどして生産性の向上を図ったことで知られています。
これらはいずれも作業の標準を定めることによって、どのような作業者が作業しても同じ結果が出るように、作業の条件や管理方法、使用する材料や、治工具などの使用設備その他の注意事項などに関する基準を定めることが生産性の向上や品質に大きく貢献できることを示すエピソードとなっています。
このような作業に関する標準化の内容を定めたものを作業標準、そのドキュメントを作業標準書と呼びますが、今では製造業に限らず、第一次産業やその他の第二次産業、第三次産業をも含めたあらゆる産業において作業標準の作成が必要となっています。
作業標準に大変似た紛らわしい言葉に標準作業がありますが、これはタクトタイムと作業順序、標準手持ちの3点を中心として標準を定めた、いわば標準化された作業のことであり、これをまとめたものが標準作業書や標準手順書ということになります。組織によっては作業標準書の中に標準作業についても記述してまとめてしまっていることもあるかと思います。
ところで、作業標準の目的は、「安全」・「品質」・「効率」を保証することにあり、そのためには常に作業標準を改善することが重要となります。
作業標準の作成については、少人数で各担当者の知識や経験から、自分たちの作業を分析して作成するため、業務の重要性を理解することができ、責任感や意識向上が図られ、人財育成・技能伝承につなげられるという利点があります。
しかし、近年、製品ライフサイクルが短くなる中で製品の仕様変更が頻発し、作業標準の更新(メンテナンス)が必要であるのに、作業標準を作成したことに満足し、更新の忘れや遅れ、ルールが守られていないなどの理由により、作業標準の目的である「安全」・「品質」・「効率」を脅かす事態まで発生しています。
テイラーやギルブレスの活躍した時代から100年以上が経過し、CPUやGPUの長足の発展によって、工場ではロボットや各種センサーをICT技術によって結び、IoTを活用したり画像認識の技術を気軽に利用できるようになるなど、現場の状況は大きく様変わりしています。
そこで、本特集では、標準資料の作成・更新・活用までを、様々な(モノづくり)現場における最新の活用事例を集めることにより、作業標準の目的である「安全」・「品質」・「効率」について有効性を紹介し、特集を通じて必要性や理解度を深めることをねらいとしました。
記事構成
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論壇
東海大学の西口宏美先生に、「標準時間設定の考え方とその方法」と題して執筆いただきました。
作業時間の標準を定める上で基本となる1単位作業の標準時間の設定方法について、原始的なストップウォッチ法をはじめとしてPTS法の他、様々な方法の解説、標準時間の活用方法などについて、混同しやすい作業標準と標準作業の違いも含めて大変分かりやすくまとめていただきましたので、参考にしていただければ幸いです。 -
ケース・スタディ
- ①日産自動車の日産教育センターで主担を務める桶田恭志氏に、「A-TWIにおける標準化活動について」と題して執筆いただきました。
同社では日産生産方式(NPW)を全社展開していますが、生産現場の現場管理を支えているのがA-TWIであり、今回は、このA-TWIについて詳細な紹介をしていただきました。
誌面ではA-TWIの基本役割5 項目について触れた後、A-TWIが現在に至るまでの歴史とその発展過程について解説されています。また、用途別に分かれた標準作業書の概要についても紹介されています。
さらにA-TWIの実践についてはPDCAサイクルを回すことによって標準作業をレベルアップすることであることを詳述しています。
特にPlanの段階では、標準作業の設定を行ないますが、設備、材料、作業方法、管理方法についての各種の基準を確実に盛り込むが重要であるとしており、この基準こそが、作業標準であることが理解できるようになっています。
Doの段階では、標準作業を徹底して遵守させることの重要性と、監督者の仕事の教え方3段階についても言及しています。
また、A-TWIを浸透させるための全部で3つの制度と仕組みについて2つの図を用いて詳しく紹介してもらいました。 - ②日本生工技研の野村和史氏には、「業務改善をITで解決!“動作分析が変える、タイムプリズム効果”」と題して執筆いただきました。
日本生工技研は作業分析ソフト「TimePrism」の開発と販売をしていることで知られていますが、今回は、このソフトの大変貴重な開発秘話を披露していただいています。この開発秘話では、当時主流となっていた作業分析におけるVTR法がVHSカセットデッキの再生と巻き戻しをしながら、結局はストップウォッチで時間測定をしている様子が紹介されています。さらに、開発を進めるにつれて必要とされる機能を追加していく様子も描かれています。
5章から7章では異なる3社のTimePrismの活用事例を詳述してくださっています。それぞれ、長谷川製作所、TMJ、新晃工業での目的が異なる事例となっていますので、参考になれば幸いです。
また、8章ではコロナ禍におけるビデオツールの活用法についても触れられており、この数か月間における各種問い合わせとその内容の変化についてリーマンショックの時との比較を交えて紹介しながら、ビデオツールを現在の環境下における最大限効果を発揮できる手段として捉えて有効活用することを説かれています。
- ①日産自動車の日産教育センターで主担を務める桶田恭志氏に、「A-TWIにおける標準化活動について」と題して執筆いただきました。
おわりに
今回の特集の編集にあたり、7月下旬から8月上旬にかけて新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況が日に日に悪化する中、多くの原稿執筆依頼を進めてまいりましたが、結果として従来の誌面に比べますと少々寂しい内容となってしまいました。
しかしながら、本特集を通して、ある種の基準に基づいて標準を設定することの重要性というものを改めて再認識していただけるのではないかと思います。また、それらの標準を適切な時期に改めていくこともIE が進化をしていく上で絶対に必要であることがお分かりいただけるものと思います。
巷では新しい生活様式とかNew Normalなどという言葉を耳にすることが多くなりました。IEの世界にも新しいIE様式なるものが出てくるかもしれませんが、本質的にみれば、過去に設定されたある種の基準を更新して新たな標準を設定しているにすぎません。
このようなことはIEの世界に限らず、どこにでもあることです。
例えば、長時間満員電車に揺られて出勤し、オフィスで仕事をし、会議は対面で、承認は押印、夜は居酒屋で宴会、というのがこれまでの働き方の標準だったとすれば、コロナ禍がきっかけとなり、通勤時間ゼロで、自宅で仕事をし、会議はリモートで、承認は電子署名で、宴会もリモートで、をこれからの標準にしていくという流れになっていくのでしょうか?もちろん、すべての仕事がリモートに置き換わることはないでしょうけれども、今後の動向が気になるところです。
最後に、新型コロナ禍下にも関わらず、本テーマの趣旨に賛同いただき、原稿執筆に協力してくださいました執筆者の皆様には心より厚く御礼申し上げます。
【論壇】標準時間設定の考え方とその方法
東海大学の西口宏美先生に、「標準時間設定の考え方とその方法」と題して執筆いただきました。
作業時間の標準を定める上で基本となる1単位作業の標準時間の設定方法について、原始的なストップウォッチ法をはじめとしてPTS法の他、様々な方法の解説、標準時間の活用方法などについて、混同しやすい作業標準と標準作業の違いも含めて大変分かりやすくまとめていただきましたので、参考にしていただければ幸いです。
【ケース・スタディ】A-TWIにおける標準化活動について
日産自動車の日産教育センターで主担を務める桶田恭志氏に、「A-TWIにおける標準化活動について」と題して執筆いただきました。
同社では日産生産方式(NPW)を全社展開していますが、生産現場の現場管理を支えているのがA-TWIであり、今回は、このA-TWIについて詳細な紹介をしていただきました。
誌面ではA-TWIの基本役割5項目について触れた後、A-TWIが現在に至るまでの歴史とその発展過程について解説されています。また、用途別に分かれた標準作業書の概要についても紹介されています。
さらにA-TWIの実践についてはPDCAサイクルを回すことによって標準作業をレベルアップすることであることを詳述しています。
特にPlanの段階では、標準作業の設定を行ないますが、設備、材料、作業方法、管理方法についての各種の基準を確実に盛り込むが重要であるとしており、この基準こそが、作業標準であることが理解できるようになっています。
Doの段階では、標準作業を徹底して遵守させることの重要性と、監督者の仕事の教え方3段階についても言及しています。
また、A-TWIを浸透させるための全部で3つの制度と仕組みについて2つの図を用いて詳しく紹介してもらいました。
【ケース・スタディ】業務改善をITで解決!‟動作分析が変える、タイムプリズム効果”
日本生工技研の野村和史氏には、「業務改善をITで解決!“動作分析が変える、タイムプリズム効果”」と題して執筆いただきました。
日本生工技研は作業分析ソフト「TimePrism」の開発と販売をしていることで知られていますが、今回は、このソフトの大変貴重な開発秘話を披露していただいています。この開発秘話では、当時主流となっていた作業分析におけるVTR法がVHSカセットデッキの再生と巻き戻しをしながら、結局はストップウォッチで時間測定をしている様子が紹介されています。さらに、開発を進めるにつれて必要とされる機能を追加していく様子も描かれています。
5章から7章では異なる3社のTimePrismの活用事例を詳述してくださっています。それぞれ、長谷川製作所、TMJ、新晃工業での目的が異なる事例となっていますので、参考になれば幸いです。
また、8章ではコロナ禍におけるビデオツールの活用法についても触れられており、この数か月間における各種問い合わせとその内容の変化についてリーマンショックの時との比較を交えて紹介しながら、ビデオツールを現在の環境下における最大限効果を発揮できる手段として捉えて有効活用することを説かれています。