ITとロボットの活用を考える
2021年3月 / 319号 / 発行:2021年3月1日
目次
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巻頭言
素材産業におけるスマートファクトリーの実現
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2021年度の特集テーマについて
2021年度の特集テーマについて
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特集テーマのねらい(特集記事)
ITとロボットの活用を考える
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論壇(特集記事)
ロボットシステムの適用拡大と課題
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ケース・スタディ(特集記事)
軽を基点とした良品廉価なクルマづくり
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ケース・スタディ(特集記事)
将来想定される仕事空間へのコミュニケーションロボットの適用検討
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ケース・スタディ(特集記事)
Collaboration in Japan 国内における産業用ロボットの活用促進に向けた取り組み
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ケース・スタディ(特集記事)
物流ロボット導入に向けたポイント
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ケース・スタディ(特集記事)
トマト収穫ロボット
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ケース・スタディ(特集記事)
作業現場でのパワーアシストスーツの導入と活用状況について
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プリズム(特集記事)
Alexa連携秘話とスマートファクトリー化に必要なこと
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会社探訪
「変革と挑戦」に取り組むものづくり中小企業のためのビジネス環境をつくり、成長を力強くサポート-MOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)-
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現場改善
人にこだわるモノづくりへの挑戦
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連載「モノづくり現場でキラリと輝く女性たち」第5回
間接業務の改善で知らず知らずのうちにIEを実践
人が育つツールとしても有効だと気づく
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コラム(114)
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協会ニュース
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
ものづくり白書2020では、不確実性の高まる世界(ニュー・ノーマル)に対応するために企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)を高める必要があると指摘されている。そして、そのための手段として、デジタル化が有効であると述べている。
デジタル化により製造業の設計力を強化し、さらにダイナミック・ケイパビリティを高めて不確実性に対処するということが、国が考えているモノづくり企業の対応策である。そして、デジタル化の手段としてIT、ロボットの活用がある。
近年、ロボットの活用は国の支援策もあり、モノづくり現場では作業者とロボットが共存したり、サービスの現場でもロボットが作業者の役割を代替したりと、人と協働するロボットの姿が見られるようになってきた。
日本ロボット工業会の調査結果によると、受注ベースで2010年の575,180百万円から2019年には811,659百万円となり、ロボット市場は拡大している。多品種少量生産に対応するにはロボットの改良もまだまだ必要となるが、すでに人口減少を迎えているわが国にとって、ロボット活用を積極的に考えることは今後の現場改善においても有効な手段である。
しかし、そのロボットをよくみると、人の作業を改善せずそのままティーチングしたり、ロボットでなければできない作業ポイントを見過ごしたり、さらには、採算の合わない高価なものを導入しているなど、必ずしも適切に運用されていない状況が見受けられる。ひどい場合には、ロボットに人が作業ペースをあわせているラインもある。
これでは、IEのめざすモチベーションの高まる現場づくりにはつながらない。ロボットの作業ロスの排除、ロボットの付加価値の検討、必要機能と付随機能の区別など、ロボットにIEの着眼点を掛け合わせることで、さらにその効果を向上することができると考えられる。
そこで、本特集では、IEの視点から、ロボット活用の様々な事例を通じて、ロボット活用のあるべき姿を考えることにより理解を深めていく。さらには、ロボットを活用したシステムの設計フィロソフィに迫り、ロボット活用の将来展望について考えることを目的としている。
記事構成
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論壇
日本ロボット工業会の村上弘記氏に、「ロボットシステムの適用拡大と課題~産業用ロボットを使ったシステムの広がりと新しいシステムの社会実装~」と題して執筆いただいた。
日本はロボット実装社会の実現に向けて取り組みを進めるているが、産業用ロボットの生産国としては世界トップを占めるも、その新しい分野への導入、そしてその分野の産業化という点では十分な成果が出ていない。その背景には、ロボットシステムが複雑な技術開発と社会実装という2つの側面の課題があり、技術革新だけでは解決できない問題点がある。
記事ではこれらの課題を整理するために、実用化されているロボットシステムを移動型、定置型で整理し、そのシステム構築の際の課題を抽出している。抽出された課題には、技術的なもののみならず、作業分析や作業者やロボットが一緒に作業することが望ましい作業を見い出すなど、管理技術の果たすべき役割についても指摘されている。
産業用ロボットの形態と特徴、動作制御の特徴、システム化の課題と研究動向、サービスロボットの開発状況、海外での取り組み、課題についても述べられている。その他、ロボットシステムの適用拡大に向けた取り組みも示されている。最後に、人とロボットの得手不得手は相反していることを理解し、作業改善するシステムインテグレータの体系的育成の必要性を説明している。 -
ケース・スタディ
- ①ダイハツ工業の古瀬信浩氏に「軽を基点とした良品廉価なクルマづくり~データ連携とロボット活用~」と題して執筆いただいた。
ダイハツ工業には、「SSC(スリム・シンプル・コンパクト)」というモノづくり哲学がある。SSCとは、トヨタ生産方式を小さい車の生産に適合させた、最小単位のモノづくりの基本となる考え方である。自動車の溶接工程ではロボットの活用が積極的に進められているが、ロボット導入に際して、要素作業を単純化し、ロボットの導入による付加価値を最大化し、さらに絶対数は必要最小であるべき、といったSSCにもとづいた基本思想を基軸に置き、導入を進めている。これらの取り組みを、実際の活動内容とともに紹介されている。 - ②日本製鉄の小神野豊氏に「将来想定される仕事空間へのコミュニケーションロボットの適用検討」と題して執筆いただいた。
日本製鉄・関西製鉄所で扱う製品の中には、人手作業に頼る工程が多い製品もあり、今後の労働力不足への対応が課題となっている。そのような中、現在進めているコミュニケーションロボットの導入検証が取り組まれている。事前に将来の仕事空間を描き、そのギャップを埋める導入の検討の流れをIEr の視点で紹介されている。 - ③ABBの村山雅成氏に「Collaboration in Japan 国内における産業用ロボットの活用促進に向けた取り組み」と題して執筆いただいた。
総合産業用ロボットメーカーであるABBは、ロボット導入がポピュラーでなかった分野の1つである三品分野(食品・化粧品・医薬品)を注力分野の1つとしている。相性のよいパートナーと組むことが、ロボット活用の成功ポイントである中、このポイントを実現するためのシステム像の構築、ロボットの処理能力と費用対効果の検討、そして対象となるワークのハンドリングといった考え方を事例に基づいて紹介している。
また、同社の双腕型の協働ロボットYuMi®の活用事例も紹介されている。 - ④Mujinの西藤謙氏に「物流ロボット導入に向けたポイント~物流ロボットの最先端活用事例~」と題して執筆いただいた。
物流倉庫では、省人化としてのロボットの導入が遅れている。これらの課題は、ロボットの能力と導入時の初期費用にある。これらの課題解決のため、自律的動作を可能にしたモーションプランニング技術の活用、そして、ソフトウェアアップデートによるロボットの導入コストの低減について事例を交え紹介されている。また、ロボット導入時の留意点もあわせて紹介されている。 - ⑤パナソニックの戸島亮氏に「トマト収穫ロボット~パナソニックのIEテクノロジーにより実現する新しい農業の世界~」と題して執筆いただいた。
農作業では、人員確保が年々困難になる中、スマート農業への期待が高まっている。同社では、トマトの収穫作業を支援するロボットの開発がこれら社会課題の解決となるとの考え方で取り組んでいる。IEの観点で行なわれた取り組みについて紹介されている。 - ⑥リコージャパンの湊和人氏に「作業現場でのパワーアシストスーツの導入と活用状況について」と題して執筆いただいた。
腰痛は国民病ともいわれ、その対応が急務となっている。パワーアシストスーツは、介護市場での導入が先行してきたが、近年、モノづくり現場への導入も進みつつある。これらの導入を進める中で、“力持ちになれる”といった誤解が障害になっている。パワーアシストスーツは“腰への負担を軽減する”ものであり、その内容を多数の事例に基づき紹介している。
- ①ダイハツ工業の古瀬信浩氏に「軽を基点とした良品廉価なクルマづくり~データ連携とロボット活用~」と題して執筆いただいた。
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プリズム
i Smart Technologiesの今井武晃氏・松下隼人氏に「Alexa連携秘話とスマートファクトリー化に必要なこと」と題して執筆いただいた。
まとめ
今回の特集を通じて、ロボットという固有技術を活かすためにIE的視点が不可欠であることが、いずれの記事においても指摘されていた。さらに、モノづくりの思想に基づいたロボット導入の重要性について理解を深めることができた。
本特集号に際して、ご多忙の折にも関わらず、記事の執筆に関してご協力をいただいた執筆者の皆さまに、心より感謝を申し上げて結びとしたい。
【論壇】先進事例と未来戦略デザイン志向のIoTハンズオン実習の設計と実証
日本ロボット工業会の村上弘記氏に、「ロボットシステムの適用拡大と課題~産業用ロボットを使ったシステムの広がりと新しいシステムの社会実装~」と題して執筆いただいた。
日本はロボット実装社会の実現に向けて取り組みを進めるているが、産業用ロボットの生産国としては世界トップを占めるも、その新しい分野への導入、そしてその分野の産業化という点では十分な成果が出ていない。その背景には、ロボットシステムが複雑な技術開発と社会実装という2つの側面の課題があり、技術革新だけでは解決できない問題点がある。
記事ではこれらの課題を整理するために、実用化されているロボットシステムを移動型、定置型で整理し、そのシステム構築の際の課題を抽出している。抽出された課題には、技術的なもののみならず、作業分析や作業者やロボットが一緒に作業することが望ましい作業を見い出すなど、管理技術の果たすべき役割についても指摘されている。
産業用ロボットの形態と特徴、動作制御の特徴、システム化の課題と研究動向、サービスロボットの開発状況、海外での取り組み、課題についても述べられている。その他、ロボットシステムの適用拡大に向けた取り組みも示されている。最後に、人とロボットの得手不得手は相反していることを理解し、作業改善するシステムインテグレータの体系的育成の必要性を説明している。
【ケース・スタディ】軽を基点とした良品廉価なクルマづくり
ダイハツ工業の古瀬信浩氏に「軽を基点とした良品廉価なクルマづくり~データ連携とロボット活用~」と題して執筆いただいた。
ダイハツ工業には、「SSC(スリム・シンプル・コンパクト)」というモノづくり哲学がある。SSCとは、トヨタ生産方式を小さい車の生産に適合させた、最小単位のモノづくりの基本となる考え方である。自動車の溶接工程ではロボットの活用が積極的に進められているが、ロボット導入に際して、要素作業を単純化し、ロボットの導入による付加価値を最大化し、さらに絶対数は必要最小であるべき、といったSSCにもとづいた基本思想を基軸に置き、導入を進めている。これらの取り組みを、実際の活動内容とともに紹介されている。
【ケース・スタディ】将来想定される仕事空間へのコミュニケーションロボットの適用検討
日本製鉄の小神野豊氏に「将来想定される仕事空間へのコミュニケーションロボットの適用検討」と題して執筆いただいた。
日本製鉄・関西製鉄所で扱う製品の中には、人手作業に頼る工程が多い製品もあり、今後の労働力不足への対応が課題となっている。そのような中、現在進めているコミュニケーションロボットの導入検証が取り組まれている。事前に将来の仕事空間を描き、そのギャップを埋める導入の検討の流れをIEr の視点で紹介されている。
【ケース・スタディ】Collaboration in Japan 国内における産業用ロボットの活用促進に向けた取り組み
ABBの村山雅成氏に「Collaboration in Japan 国内における産業用ロボットの活用促進に向けた取り組み」と題して執筆いただいた。
総合産業用ロボットメーカーであるABBは、ロボット導入がポピュラーでなかった分野の1つである三品分野(食品・化粧品・医薬品)を注力分野の1つとしている。相性のよいパートナーと組むことが、ロボット活用の成功ポイントである中、このポイントを実現するためのシステム像の構築、ロボットの処理能力と費用対効果の検討、そして対象となるワークのハンドリングといった考え方を事例に基づいて紹介している。
また、同社の双腕型の協働ロボットYuMi®の活用事例も紹介されている。
【ケース・スタディ】物流ロボット導入に向けたポイント
Mujinの西藤謙氏に「物流ロボット導入に向けたポイント~物流ロボットの最先端活用事例~」と題して執筆いただいた。
物流倉庫では、省人化としてのロボットの導入が遅れている。これらの課題は、ロボットの能力と導入時の初期費用にある。これらの課題解決のため、自律的動作を可能にしたモーションプランニング技術の活用、そして、ソフトウェアアップデートによるロボットの導入コストの低減について事例を交え紹介されている。また、ロボット導入時の留意点もあわせて紹介されている。
【ケース・スタディ】トマト収穫ロボット
パナソニックの戸島亮氏に「トマト収穫ロボット~パナソニックのIEテクノロジーにより実現する新しい農業の世界~」と題して執筆いただいた。
農作業では、人員確保が年々困難になる中、スマート農業への期待が高まっている。同社では、トマトの収穫作業を支援するロボットの開発がこれら社会課題の解決となるとの考え方で取り組んでいる。IEの観点で行なわれた取り組みについて紹介されている。
【ケース・スタディ】作業現場でのパワーアシストスーツの導入と活用状況について
リコージャパンの湊和人氏に「作業現場でのパワーアシストスーツの導入と活用状況について」と題して執筆いただいた。
腰痛は国民病ともいわれ、その対応が急務となっている。パワーアシストスーツは、介護市場での導入が先行してきたが、近年、モノづくり現場への導入も進みつつある。これらの導入を進める中で、“力持ちになれる”といった誤解が障害になっている。パワーアシストスーツは“腰への負担を軽減する”ものであり、その内容を多数の事例に基づき紹介している。