5Sを中心とした現場改善
2021年5月 / 320号 / 発行:2021年5月1日
目次
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巻頭言
コロナ禍における「5Sを中心とした現場改善」の意義
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特集テーマのねらい(特集記事)
5Sを中心とした現場改善
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論壇(特集記事)
新しい5Sのかたち
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ケース・スタディ(特集記事)
守ろう6S我らの誓い
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ケース・スタディ(特集記事)
5Sで会社を変える
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ケース・スタディ(特集記事)
広島三原3Sネットワークの取り組み
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プリズム(特集記事)
従業員による3Sサミット
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連載「モノづくり現場でキラリと輝く女性たち」
手法やフィールドにとらわれず、会社方針に則して「自分がやりたいことを形にして成果にする」
新しい時代のIErとしての働き方
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コラム(115)
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協会ニュース
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私のすすめる本
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
提供される製品やサービスのQCDを向上させていくためには、地道な改善活動を継続することが大切になります。その際、改善活動の原点に5S活動が位置づけられると考えます。5S活動は、工場の秩序を形成し、製造作業を標準化する際に極めて重要な活動です。日本の製造業を取り巻く経営環境は、依然として厳しいものがあるため、各社とも、より一層の技術開発の推進、スムーズな新製品の量産立ち上げ、製造現場の中核人材の採用・育成など、次なる成長に向けた経営資源の蓄積を積極的に推進し、企業競争力の強化に磨きをかけています。このような中で、様々な改善活動の原点に位置づけられる5S活動は、モノづくりの中核を担う活動として、従来にも増してその重要性が高まってきていると感じています。
一方、最近の5S活動を見ていると、とかく短期的・直接的な成果のみを追い求めるケースが散見されます。しかし、本来の5S活動の中には、短期的に効果が顕在化しにくい活動や、活動を通じて間接的に人材が育成されるなど、むしろ長期的な観点から活動を継続することで、企業の組織風土が形成され、製造体質が変わっていくことで、初めて効果に結びつく活動も多く存在していると考えます。
本特集では、このような背景から、長期的に企業競争力を強化していくためには、どのような5S活動を展開すべきなのか、またどのように推進・サポートしていけば、5S活動を長期継続することが可能になり、その結果、企業競争力の向上に結びつけることができるのか、といったテーマを主軸において特集記事を募りました。
テーマの骨子
5S活動と一口にいっても、企業規模や事業内容、工場のマネジメントスタイルによって、様々に異なる活動が考えられます。そのため、特集記事を執筆いただく際には、5S活動として、日々具体的にどのような活動を展開されているか、どのような推進体制で取り組んでいるかなど、5S活動の概要をまとめていただいた上で、以下の2つの視点で記事を執筆していただきました。
(1)具体的な5S活動事例の内容を詳しく記述していただきました。5S活動以前にはどのような問題を抱えていたのか、その問題に対して、5S活動を推進することで、職場がどのように変化していったのか、また、そこで働く従業員の方々の意識はどのように変化していったのか、そして最終的にどのような成果に結びついたのか、といった一連の内容についてまとめていただきました。
(2)一方、個々の活動内容もさることながら、5S活動を推進するマネジメントとして、どのような5S活動を展開すべきか、また、活動をどのように推進・サポートすれば、5S活動を長期継続することが可能になり、企業競争力の向上に結びつけることができるのかについて、マネジメントご自身の持論を展開していただきました。
記事構成
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論壇
日本生産性本部の鍛治田良氏に「新しい5Sのかたち」と題して執筆いただきました。コンサルタントとして多くの製造現場を見てきた結果、これまでの経験とセオリーを踏襲するだけでは、5S活動をうまく展開できないのではないか、時代の変化に合わせて5S活動のやり方も見直すべきではないかとの問題意識から、現場の行動変革を促す5S活動を進めていくためには、現場に対して繰り返し様々な形で即時フィードバックを行なっていくことが重要になるとのことです。
特に「デジタル化で産業構造は大きな転換点を迎えている今、長期的な視点で現場の価値を考え、現場を変えていくべきではないか」との主張は、共感できる部分も多く、読者の参考になる内容ではないかと感じました。 -
ケース・スタディ
- ①しのはらプレスサービスの篠原正幸氏には、受け身型のやらされ改善ではなく、社員1人1人が主役となる改善活動を行なうために必要な考え方について紹介いただきました。
まず改善活動を行なう際には、活動を行なう真の意味を理解してもらい、率先して行動するようになってもらう必要があるが、そのためには、改善活動自体が会社のためではなく、自分の生活を守る、生活をより向上させることにつながる活動であることをしっかりと納得してもらうことが何よりも重要であるとのことです。
そのため、同社では、創業の理念を実現するためにどのように行動したら良いかを社員全員で考え、これを「守ろう6S我らの誓い」という形で標語にまとめています。これら6Sのフレーズは、一般にいわれる5Sにつながる内容となっていますが、同社はこの6Sを軸に、これまで改善活動を継続してきたといいます。改善活動の目的は、「社員にとってメリットがあると思えることが望ましいし、そうあるべきだと思う。そして、活動を通じ、その人自身が変化し、そのエネルギーが会社を変えるのだと思う」とのメッセージは、会社経営の原点に立脚した改善活動の1つのあり方を示していると考えられます。 - ②鈴木5Sコンサルティングの鈴木浩也氏には、一般によく見られるモノ(物)やコト(事)を対象とした5Sではなく、働く人たちの意識改革を行ない、組織を変えていくことを目的とした、ヒト(人)を対象とした5S活動の概要について紹介いただきました。
具体的には、5Sを合言葉に異業種間で学んでいく「きらめく5S学校」における活動、またこの学校で得た知識を実践につなげて、受講生をサポートする大阪3S 実践会という活動について、4社の5S実践事例を交えつつ紹介いただきました。その中でも、特に「5Sはモノ・コトを動かすことを目的にするのではなく、人を成長させることにつなげるべきである」「5Sの本質は3S(整理・清掃・整頓)である。手を動かす実践をしていかなければいけない」「限りなく最初の1S(整理)でシンプルな状態をつくり、必要最低限の中で清掃と整頓を行なう」「5Sを単に整理整頓、キレイにするツールではなく、企業の競争に勝ち残るための組織体質の強化として考えるべきである」という主張は、多くの製造現場を見てきた経験に裏打ちされた迫力のある主張であると感じました。 - ③日鐵鋼業の能登伸一氏、広島三原3Sネットワークの黒川勝三氏には、中小企業が共同で切磋琢磨しつつ、3S(整理・整頓・清掃)に取り組むネットワーク活動について紹介いただきました。
3Sは自分たちの職場を自分たちの力で活性化させ、強い企業体質をつくり上げるための活動であり、1社で活動するのではなく、複数社でネットワークを組んで活動することで、仲間と切磋琢磨することができ、活動も継続しやすいとのことです。
- ①しのはらプレスサービスの篠原正幸氏には、受け身型のやらされ改善ではなく、社員1人1人が主役となる改善活動を行なうために必要な考え方について紹介いただきました。
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プリズム
大阪工業大学の皆川健多郎氏には、2011年から開始された3Sサミットについて紹介いただきました。
毎年1回、秋に開催しているこの活動は、東は宮城県、西は沖縄県と、全国各地から様々な企業が参加し、活発に交流が行なわれています。活力と魅力ある企業づくりのためには、従業員自らの成長が必要であり、そのためには、従業員自らが企画・運営にも携わる必要があるとの考えから、現在では、各会員企業より実行委員を募り、企画・運営を行なっているとのことです。
まとめ
以上の論考を見ると、5S活動におけるマネジメントとして、いくつかの共通項が存在するのではないかとの感想を持ちました。
第1に、従業員自らが主体的に活動に参画し、活動を継続していくためには、指導するコンサルタントや経営トップの理念・考え方が極めて重要であるという点です。また、同時にこのような理念・考え方をいかに愚直にしつこく、徹底して従業員に説いていくかというコミュニケーションも極めて重要であると感じました。
第2に、結局どの組織においても、5S活動を実践する際には、人という要素に焦点をあてたマネジメントが重要であるという点です。日々の5S活動においては、結局は人に対する教育やモチベーションの維持・向上が重要であるという点です。「モノづくりは人づくり」とよくいわれるゆえんがここにあるのではないかと思います。
企画担当者としては、以上の感想を持ちましたが、読者はどのような感想を持たれるでしょうか。本企画の内容が少しでも読者の参考になれば幸いです。
【論壇】新しい5Sのかたち
日本生産性本部の鍛治田良氏に「新しい5Sのかたち」と題して執筆いただきました。コンサルタントとして多くの製造現場を見てきた結果、これまでの経験とセオリーを踏襲するだけでは、5S活動をうまく展開できないのではないか、時代の変化に合わせて5S活動のやり方も見直すべきではないかとの問題意識から、現場の行動変革を促す5S活動を進めていくためには、現場に対して繰り返し様々な形で即時フィードバックを行なっていくことが重要になるとのことです。
特に「デジタル化で産業構造は大きな転換点を迎えている今、長期的な視点で現場の価値を考え、現場を変えていくべきではないか」との主張は、共感できる部分も多く、読者の参考になる内容ではないかと感じました。
【ケース・スタディ】守ろう6S我らの誓い
しのはらプレスサービスの篠原正幸氏には、受け身型のやらされ改善ではなく、社員1人1人が主役となる改善活動を行なうために必要な考え方について紹介いただきました。
まず改善活動を行なう際には、活動を行なう真の意味を理解してもらい、率先して行動するようになってもらう必要があるが、そのためには、改善活動自体が会社のためではなく、自分の生活を守る、生活をより向上させることにつながる活動であることをしっかりと納得してもらうことが何よりも重要であるとのことです。
そのため、同社では、創業の理念を実現するためにどのように行動したら良いかを社員全員で考え、これを「守ろう6S我らの誓い」という形で標語にまとめています。これら6Sのフレーズは、一般にいわれる5Sにつながる内容となっていますが、同社はこの6Sを軸に、これまで改善活動を継続してきたといいます。改善活動の目的は、「社員にとってメリットがあると思えることが望ましいし、そうあるべきだと思う。そして、活動を通じ、その人自身が変化し、そのエネルギーが会社を変えるのだと思う」とのメッセージは、会社経営の原点に立脚した改善活動の1つのあり方を示していると考えられます。
【ケース・スタディ】5Sで会社を変える
鈴木5Sコンサルティングの鈴木浩也氏には、一般によく見られるモノ(物)やコト(事)を対象とした5Sではなく、働く人たちの意識改革を行ない、組織を変えていくことを目的とした、ヒト(人)を対象とした5S活動の概要について紹介いただきました。
具体的には、5Sを合言葉に異業種間で学んでいく「きらめく5S学校」における活動、またこの学校で得た知識を実践につなげて、受講生をサポートする大阪3S 実践会という活動について、4社の5S実践事例を交えつつ紹介いただきました。その中でも、特に「5Sはモノ・コトを動かすことを目的にするのではなく、人を成長させることにつなげるべきである」「5Sの本質は3S(整理・清掃・整頓)である。手を動かす実践をしていかなければいけない」「限りなく最初の1S(整理)でシンプルな状態をつくり、必要最低限の中で清掃と整頓を行なう」「5Sを単に整理整頓、キレイにするツールではなく、企業の競争に勝ち残るための組織体質の強化として考えるべきである」という主張は、多くの製造現場を見てきた経験に裏打ちされた迫力のある主張であると感じました。
【ケース・スタディ】広島三原3Sネットワークの取り組み
日鐵鋼業の能登伸一氏、広島三原3Sネットワークの黒川勝三氏には、中小企業が共同で切磋琢磨しつつ、3S(整理・整頓・清掃)に取り組むネットワーク活動について紹介いただきました。
3Sは自分たちの職場を自分たちの力で活性化させ、強い企業体質をつくり上げるための活動であり、1社で活動するのではなく、複数社でネットワークを組んで活動することで、仲間と切磋琢磨することができ、活動も継続しやすいとのことです。
【プリズム】従業員による3Sサミット
大阪工業大学の皆川健多郎氏には、2011年から開始された3Sサミットについて紹介いただきました。
毎年1回、秋に開催しているこの活動は、東は宮城県、西は沖縄県と、全国各地から様々な企業が参加し、活発に交流が行なわれています。活力と魅力ある企業づくりのためには、従業員自らの成長が必要であり、そのためには、従業員自らが企画・運営にも携わる必要があるとの考えから、現在では、各会員企業より実行委員を募り、企画・運営を行なっているとのことです。